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夏の皮膚トラブル

今月の漢方

皮膚病は、中国では古来より「瘡瘍=そうよう」と言われ、外科疾患の一つとして扱われてきました。

漢方では「内に病あれば、必ず外にあらわれる」という考え方があります。季節や気候などの外因(風・熱・湿・燥・寒)が合併したり、また食事の偏り、睡眠不足、ストレス、喫煙などの生活習慣の乱れも発症原因の一つです。

皮膚病の分類は主に、季節型、実証(激しい症状)、虚証(緩やかで長引く)に分けられます。湿疹や皮膚炎は、皮膚が赤く腫れる、ジュクジュクする、又はカサカサして乾燥する等、かゆみを伴う事が多いです。西洋医学の治療にはステロイド外用薬や保湿剤、かゆみが強い場合には内服の抗ヒスタミン薬等が用いられます。

漢方の考え方に基づくと、皮膚病の病名にこだわるよりも、体質や肌の状態をみて全身的な状態を総合的に判断して弁証する事が重要になります。皮膚の状態がジュクジュク湿った状態か、化膿しているか、乾燥しているか等に応じて処方を決めます。

漢方では、季節型のうち梅雨以降に発症する「夏型」が8割、秋以降に発症する「冬型」が2割と言われています。今回は主に夏型の皮膚病を取り上げます。

夏の皮膚病は「風、湿、熱」の邪気の特徴があります。「風」はかゆみがあり、体のあちこちに湿疹が飛びます。「湿」は水泡ができたり、掻くとジュクジュクして汁が出ます。「熱」は赤みがあり炎症が起きます。この三つの邪気が一度に急激に発症するのが夏の湿疹の特徴です。主な夏の皮膚病には、湿疹、あせも、とびひ、蕁麻疹、水いぼ、水虫等があります。

皮膚病が厄介なのは、かゆみがあり、掻くと気持ちが良いので多幸感を感じて更に掻いてしまいます。かゆい→掻く→気持ち良い→更にかゆい→また掻くを繰り返して悪循環に陥り、悪化していきます。そのため皮膚病は内服薬と外用薬を併用し、かゆみを止める事が大事です。

夏の皮膚トラブルでよく使われる漢方

消風散>しょうふうさん

構成生薬: 防風・荊芥・蝉退・牛蒡子・石膏・知母・苦参・地黄・蒼朮・木通・当帰・胡麻仁・甘草

 消風散の最大の特徴は「袪風止痒(きょふうしよう)」と「清熱化(せいねつけ)(たん)」です。炎症性でかゆみを伴う皮疹に対する代表処方で、夏の蕁麻疹や湿疹に対するファーストチョイスで使われる事が多いです。見極めのポイントは風湿熱の皮疹(ひしん)で、強いかゆみ(夜間に悪化傾向)、と遊走性(ゆうそうせい)(あちこちにできる)、滲出物が多くジュクジュクしている、(ほっ)(せき)熱感等の炎症傾向がある事です。消風散はかゆみを引き起こす風邪(ふうじゃ)を消散する作用がある為、消風散と名付けられました。風邪(ふうじゃ)に湿熱の邪気が結びついて体内にこもると更にかゆみや湿疹が悪化します。荊芥・防風・牛蒡子・蝉退は風邪(ふうじゃ)を追い出すと共に、止痒(しよう)作用もあります。苦参・石膏・知母は抗炎症作用を持ち、消炎に働きます。蒼朮と木通は利湿して、水泡や滲出物を取り除いてくれます。そして当帰・地黄・胡麻仁は身体や皮膚を潤す作用があるので、薬によって皮膚が乾燥し過ぎないように働きます。

黄連解毒湯>=おうれんげどくとう

構成生薬: 黄連・黄芩・黄柏・山梔子

 黄連解毒湯の最大の特徴は「清熱(せいねつ)(しゃ)()」と「解毒・化湿」で、漢方の抗炎症剤(天然の抗生物質)と言われています。病気を発症する邪気は六種類あり、風熱湿燥寒火の(りく)(じゃ)と呼ばれます。六邪のうち()(じゃ)は、発病が急で進行が早く、全身又は局所に火熱の症候(発赤、腫張、痛み、熱感、歯痛、出血、口や喉の渇き、舌や唇の乾燥のひび割れ)等が現れます。黄連解毒湯は、この火邪に対応する漢方薬です。黄連、黄芩、黄柏は清熱燥湿(せいねつそうしつ)薬で、上焦から下焦の全身の湿熱を取り去ります。(さん)梔子(しし)はくちなしの実を乾燥させたもので、清熱瀉火の働きがあり、炎症による出血を止める作用もあります。4種類の清熱解毒薬だけで構成されているので効き目はシャープに働きます。その反面冷え性や、お腹の弱い人は注意して服用する必要があります。

十味敗毒湯>じゅうみはいどくとう

構成生薬: 防風・荊芥・独活・柴胡・桜皮・川芎・桔梗・甘草・茯苓・生姜

 十味敗毒湯の特徴は「袪風化湿(きょふうけしつ)」と「清熱(せいねつ)解毒(げどく)」です。炎症や化膿傾向のあるおできや皮疹の初期に用いられます。おできの一連の症状は、始めに地腫(じば)れ、次に赤く腫れあがり、化膿し、最後に先端が破れ、膿が排出されて治癒するのが一般的です。防風、荊芥、独活、川芎で毒物を体表から発散させ、柴胡、桜皮、桔梗、甘草が清熱解毒に働き、茯苓生姜は利湿と消化吸収を促進します。十味敗毒湯の最大の特徴は、桜皮と桔梗によって排膿を促進する事で、おできやニキビの初期に服用する事をお勧めします。

外用薬

ベルクミン 

 黄柏、ウコンの二種類の清熱解毒薬で構成されています。かゆみ、痛み、腫れ、おでき、湿疹、あせも等の多種の炎症型皮膚トラブルに使われます。内服薬との併用、虫刺されや火傷等、家庭の常備薬として使いやすい漢方の塗り薬です。

土槿皮酊(ドキンピチンキ)

 夏に悪化する水虫、いんきんたむしの生薬配合の薬です。

 この他、あせもには桃の葉の薬草風呂がお勧めです。ガーゼやお茶パックに桃の葉を入れお鍋で煮出し、煮出した液と共に湯船に入れるとあせもに良いと言われています。新鮮な物でも、乾燥させた物でもどちらでも大丈夫です。

 肌は排泄器官と言われています。汗をかいたらすぐに洗い流すか拭き取り、古い皮脂汚れや塩分を残さず、清潔な素肌を保ちましょう。毎日の肌のケアに天然素材由来100%のアミノ酸系洗浄料(ボディーシャンプー)等も取り扱っていますので興味のある方は一度お試し下さい。

かゆみタイプの食養生

 体内の水分や血が不足すると皮膚に潤いや栄養が行き渡らないわたらない為、かゆみが現れます。薄荷・三つ葉・菊花茶・シソ・桑の葉などで巡りをよくする。

ジュクジュクタイプの食養生

 体内に湿(余分な水分)が溜まっていると炎症などを起こすことがあります。ハトムギ・ドクダミ茶・小豆などでデトックス。

皮疹を悪化させる飲食物

 肥甘(ひかん)厚味(こうみ)のもの(脂っこいもの、甘味の強い物、味が濃く辛い物)、アルコール類は炎症を促進させます。特にアルコールは入血(血液に吸収される)スピードが早く、急激な悪化を招きます。

次回のご案内

 今回は夏型の皮膚トラブルについて説明してきました。アトピー性皮膚炎と冬型の皮膚トラブルは別の機会にお伝えしようと思います。

次回のテーマは残暑に多い、体調不良についてご紹介します。