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今月の漢方 婦人科

今月の漢方

婦人科の漢方vol.1 月経異常

婦人科に関する病症は、月経・妊娠・更年期・女性特有の病気(子宮系・乳房に関する病気)などに分類されます。

今月は女性が一生の内で一番悩み多き、また身近な「月経」を取り上げます。

月経は、一般的に約4週間を1周期とし、低温期、排卵期を経て高温期となり月経が起こります。漢方の陰陽論では、低温期を「陰」の期間、高温期を「陽」の期間と言います。この陰と陽とが切り替わる事で月経が発生します。

人は自分の意志に関係なく、自律神経やホルモンの影響を受けて暮らしています。

西洋医学的には女性ホルモンとは、主に卵巣から低温期に分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)と高温期に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)の総称で、自律神経の指令により、この2つのホルモンが交互に分泌されることで月経が正常に起こります。

漢方でいう陰陽、西洋医学では自律神経とホルモンが乱れると、月経に大きな影響を与える事になります。また、女性は「血の生き物」と言われるほど、漢方では女性にとって「血」が大切と考えます。良い血を生成し体全体に巡らせ、陰陽、ホルモンのバランスを整える事が、大変重要になります。

月経にまつわる病症

●月経不順 一般に月経は25日から35日周期で起こりますが、それより短い、または長い場合、あるいは周期がバラバラな場合を「月経不順」といいます。

●月経困難症 月経中に強い下腹部痛、腰痛があり、鎮痛剤を服用せずにいられなかったり、頭痛・吐き気などの随伴症状を伴うこともあります。

●月経前症候群(PMS) 月経の始まる1週間ほど前から、イライラ・怒りっぽい・憂うつ・頭痛・肩こり・便秘・乳房が張るなど、心身の様々な症状が起こり、月経が始まると収まります。

●月経過多・月経過少 月経過多の場合、出血量が異常に多く月経期間が長い傾向にあり、血虚(貧血など)を招きます。過少の場合、出血量が異常に少なく月経期間が短い傾向にあり、元々血虚が原因の事もあります。

月経異常でよく使う漢方

当帰芍薬散=とうきしゃくやくさん

効  能 補血/活血/健脾利水/調経止痛

構成生薬 当帰・芍薬・川芎・白朮・茯苓・沢瀉

適応症状 月経不順 月経痛 むくみ 冷え 立ちくらみ めまいなど 

当帰芍薬散の最大の特徴は補血活血です。

「血」を補い巡らす当帰、川芎が主な生薬です。

その他、止痛作用のある芍薬、利水作用のある白朮、茯苓、沢瀉も入っています。

食べ物を消化吸収しにくい(脾虚体質)、更に偏食があると「血」を生成しにくい事により血虚となります。血虚はわかりやすく言えば栄養不足状態であり、主に月経の遅延や過少月経を招きます。血の巡りが悪いと瘀血(血の滞り)を招き月経痛の原因になります。

また、脾虚は水分の代謝も悪化させ、むくみやめまいを発症する場合もあります。

「血」を補い巡らして、消化吸収、水分代謝を促進し、月経不順を改善していきます。

加味逍遙散かみしょうようさん

構成生薬 柴胡・当帰・芍薬・茯苓・白朮・甘草・生姜・薄荷・牡丹皮・山梔子

効  能 疏肝解鬱/健脾補血/清熱涼血

適応症状 自律神経失調 不眠 月経不順 月経痛 イライラ 怒りっぽい 頭痛 のぼせ 胃痛 肩こり 便秘  PMS(乳腺張痛 ニキビ 肌荒れ 過食 拒食) 月経に伴う不定愁訴など

加味逍遙散の最大の特徴は疏肝解鬱です。

漢方の五臓(肝心脾肺腎)の中で、「肝」は、自律神経系など情緒活動に関連する中枢神経系、血液循環、ホルモン分泌などの調節機能を担っています。

仕事や育児に介護など、ストレスが加重にかかると「肝」の機能が失調し、「気」の巡りが悪くなります。「気」はエネルギー(気力、抵抗力など)のことで、強いストレスがかかると「気」の働きが悪くなります。これを「気滞」といいます。

この「気滞」を解消する事を「疏肝解鬱」と言います。  

柴胡・薄荷は自律神経の緊張を緩和し、気の巡りを良くします。牡丹皮と山梔子は清熱作用で精神の興奮を抑えてイライラを鎮め、柴胡と薄荷の働きを増強させます。

当帰・芍薬は補血し、血流をよくすることで全身に栄養を送ります。

芍薬は補血以外にもエストロゲンと似た作用があるため、ホルモンのバランスを整えます。不定愁訴といわれる様々な不調や不眠などにも効果的です。

芎帰調血飲第一加減=きゅうきちょうけついんだいいちがげん

構成生薬 当帰・地黄・茯苓・烏薬・牡丹皮・大棗・生姜・川芎・白朮・陳皮・香附子・益母草・甘草・桃仁・紅花・枳実・桂皮・牛膝・木香・延胡索・芍薬

効能 活血化瘀/補血温裏/理気止痛 

適応症状 月経痛 月経不順 無月経 冷え症、産後の悪露、血虚など 

芎帰調血飲第一加減の最大の特徴は活血化瘀と止痛です。

「血」が停滞した状態を「瘀血」と言います。瘀血は多くの血管疾患の原因となりますが、婦人科系では強い月経痛や無月経を引き起こします。

漢方では、「不通即痛」と言って、痛みは通らない事により起こるもので、その原因を除去すれば痛みが軽減、解消すると言われます。

多種の活血化瘀薬を配合する事により、瘀血を改善し痛みを止めます。

当帰、川芎、地黄は補血活血し、桃仁、紅花、牛膝は強い活血作用により瘀血を除去します。延胡索は活血と同時に理気止痛し、強い鎮痛効果があります。

桂皮と乾姜は体を温め、冷え性を改善します。

陳皮、烏薬、香附子は理気により瘀血の除去を補助し、香附子は調経(月経を整える)作用もあります。

その他、産後の悪露や血虚の改善にもよく使われます。

次回のご案内

 次回は、「妊活」を取り上げます。新型コロナウイルスのため外出は控えたい場合、お電話でのご相談も受けておりますので、お気軽にご連絡ください。お客様と共に、健康で明るい毎日を過ごすための漢方相談を目指しています。