花粉症は、スギやブタクサなどの花粉が鼻、のど、目、皮膚の粘膜を刺激し、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目や皮膚のかゆみなどの症状を起こします。症状が重くなると、頭が重い、だるさや不眠、集中力の低下など、全身の症状があらわれることもあります。
今月は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目や皮膚のかゆみなどの改善によく使われる漢方薬をご紹介します。 漢方では、鼻水の状態を寒証「サラサラとしたの透明な鼻水」と熱証「ネバネバの粘性のある鼻汁」に分けて考え、それぞれに対応する漢方薬を使っていきます。
写真は、左から、苓甘姜味辛夏仁湯(水気散)、小青竜湯、葛根湯加川キュウ辛夷、柴胡清肝散、荊芥連翹湯、銀翹解毒散です。
左側の3種類「苓甘姜味辛夏仁湯、小青竜湯、葛根湯加川キュウ辛夷」は、寒証(冷えの影響を受ける)に、右側の3種類「柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、銀翹解毒散」は熱証(炎症が強い)に対応する漢方薬です。
1、寒証に対応する漢方薬
小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯は、咳、痰が多い、くしゃみ、うすい鼻水、鼻水が止まらない、朝起きた時にひどい、などの寒証の症状によく使われます。 小青竜湯の構成生薬は、「麻黄、桂枝、甘草、乾姜、五味子、細辛、半夏、芍薬」の8種類です。 苓甘姜味辛夏仁湯の構成生薬は、「茯苓、甘草、乾姜、五味子、細辛、半夏、杏仁」の7種類です。苓甘姜味辛夏仁湯の処方名は、それぞれの一文字ずつをとって名付けられているので、構成生薬を覚えやすいと言えます。青文字の5種類の生薬は二つの処方に共通して配合されており、温める働きや収斂(鼻水を止める)の働きがあるので上記の症状に適用します。二つの処方の使い分けは、 小青竜湯は、頭が痛い、寒気がするなどの症状を伴う場合にも効果的であり、デュ・アン漢方相談でも汎用しています。小青竜湯は「麻黄」が主成分です。「麻黄」は、汗をかかせ発散させる生薬であり、比較的「体力のある」人に使用するため、妊婦さん、老人、虚弱な方の場合は、苓甘姜味辛夏仁湯が適しています。
葛根湯加川キュウ辛夷は、鼻づまりが強い寒証の症状によく使われます。肩・首筋の凝り、お風呂などで温まると鼻の通りが良くなるなどの副鼻腔炎、慢性鼻炎、に特に適しています。葛根湯加川キュウ辛夷の構成生薬は、「桂枝、芍薬、大棗、生姜、甘草、葛根、麻黄、川キュウ、辛夷」です。「桂枝~麻黄」までが、葛根湯であり、それに「川キュウと辛夷」を加えたものが葛根湯加川キュウ辛夷です。葛根湯は、温めて表面の邪気を発散させたり、巡りを良くすることで肩・首筋の凝りを解消します。更に、川キュウは血液の巡りを改善し、頭痛にも適用されます。辛夷は通鼻薬に分類され、鼻の通りを改善してくれます。
※寒証に対応する3処方の効能効果を参考にして下さい。
・苓甘姜味辛夏仁湯(水気散):体力のおとろえ、貧血気味、冷え症の人の気管支炎、気管支喘 息、肺気腫
・小青竜湯:体力中等度又はやや虚弱で、うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出るものの次の 諸症 気管支 炎、気管支ぜんそく、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症
・葛根湯加川キュウ辛夷(ノンパースA):比較的体力があるものの次の諸症:鼻づまり、蓄膿症 (副鼻腔炎)、慢性鼻炎
2、熱証に対応する漢方薬
柴胡清肝散と荊芥連翹湯は、慢性化した粘膜の炎症を改善するためによく使われます。柴胡清肝散の構成生薬は「黄連、黄ゴン、黄柏、山梔子、牛蒡子、連翹、地黄、芍薬、川キュウ、当帰、カロコン、柴胡、薄荷、桔梗、甘草」の15種類です。荊芥連翹湯の構成生薬は「黄連、黄ゴン、黄柏、山梔子、当帰、芍薬、川キュウ、地黄、柴胡、薄荷、桔梗、甘草、連翹、荊芥、枳殻、ビャクシ、防風」の17種類です。 青文字の13種類の生薬は二つの処方に共通しており、 消炎、解毒、排膿、滋潤などの働きがあり、副鼻腔炎、膿のある湿疹、咽頭炎、扁桃腺炎、目のかゆみなどに適用します。二つの処方の使い分けは、荊芥連翹湯は膿がより濃い場合に適しています。柴胡清肝散は、小児のアレルギー体質の改善にも適した処方です。
銀翹解毒散は、風邪の初期の熱証によく使われます。銀翹解毒散の構成生薬は「金銀花、淡竹葉、連翹、荊芥、牛蒡子、桔梗、甘草、淡豆鼓、羚羊角」の9種類です。ほとんどの薬草に強い消炎効果があります。
※熱証に対応する 3処方の効能効果を参考にして下さい。
・柴胡清肝散
体力中等度で、疳が強い傾向(神経過敏)にあるものの次の諸症:神経症、慢性扁桃炎、湿疹、皮膚炎、虚弱児の体質改善
・荊芥連翹湯
体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒く、ときにてあしの裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの次の諸症:蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび
・銀翹解毒散
風邪によるのどの痛み・せき・口(のど)の渇き・頭痛