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薬草のはなし vol.15 桂皮(けいひ)

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 写真は、肉桂(ニッケイ)の木です。(2020.8 東京薬用植物園にて撮影)肉桂はクスノキ科で、中国南部・ベトナムに自生しています。樹皮は生薬として頻繁に使われるのため、古くから栽培もされています。樹高は、17mに達する巨木です。生薬名は、桂皮(けいひ)と言います。

 写真は、セイロンニッケイです。ご存知のシナモンです。前述の桂皮と成分的にはほぼ同じですが、辛みが少ないため、香味料としてよく使われています。シナモンロール、シナモンティー、カプチーノ、アップルパイ、シナモンパウダー、シナモンスティック、シナモンデニッシュ‥よく目にします。香辛料の王様と言われる所以です。私の生まれ育った家の裏山や段々畑の脇には、肉桂(“ニッキ”と言っていた)の木がありました。このシナモンの樹皮をペロペロ舐めながら、野山を駆け回っていたことが懐かしく思い出されます。

 肉桂は、エジプトのミイラの防腐剤としても使われています。また、将棋の駒に桂馬がありますが、その由来は肉桂から来ています。将棋の駒は、金や銀などのように非常に価値の高いものから名付けられています。このように、肉桂は、古代から香辛料のみならず、防腐剤などにも汎用されており、さらには将棋の桂馬にまで名前が付けられるほど親しみ深く、とても重要な植物です。

 桂皮は、甘く、辛く、やや渋みがあり、独特な芳香があります。その芳香成分は、桂皮アルデヒド、桂皮酸などが主なものです。

左の写真は、2021.1 デュ・アン 漢方相談にて撮影しました。シナモンスティックというより、肉厚の大きな木の皮です。写真ではお伝え出来ませんが、とても良い香りです。

 漢方処方には、桂枝湯(けいしとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)など、桂枝がつくものが沢山ありますが、実際には桂枝(若い枝)ではなくて、桂皮が使われています。※日本に入ってきたときに本来は、桂枝を使うべきところが、手違いで桂皮のみになってしまいました。

桂皮の漢方的な分類

<温中補陽、散寒止痛>の働きがある

 ・寒邪により引き起こされた下腹部痛、月経痛などに適応する。

 ・腎陽虚による冷え、水分代謝異常、老化 ー八味丸

<発汗解肌(体の表面を温める):桂枝>の働きがある

 ・悪寒、悪風の外感風寒 ー桂枝湯、葛根湯

<温陽利水:桂枝>の働きがある

 ・脾胃陽虚の痰飲、むくみ ー五苓散、苓桂朮甘湯

<温通経絡>の働きがある

 ・風寒湿痺 ー桂枝加苓朮附湯 

 ・婦人の寒証 ー桂枝茯苓丸

<温中散寒:桂枝>

 ・虚寒腹痛 ー小建中湯

桂皮が配合されている漢方処方と効能効果

※漢方212処方(薬局製剤)のうち、60処方に配合されているので主な処方のみ掲載します。

安中散(あんちゅうさん):神経性胃炎、慢性胃炎、胃アトニー

・インチン五苓散(いんちんごれいさん):嘔吐、じんましん、二日酔いのむかつき、むくみ

・温経湯(うんけいとう):月経不順、月経困難、こしけ、更年期障害、不眠、湿疹、足腰の冷え、しもやけ

・葛根湯(かっこんとう):感冒、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み

・桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう):関節痛、神経痛

・桂枝茯苓丸料(けいしぶくりょうがんりょう):のぼせ症で、血色よく、頭痛、肩こり、めまい、下腹部痛、足腰の冷えあるいはうっ血などを伴うもの、月経不順、月経困難症、打撲症、婦人更年期障害

・五苓散料(ごれいさんりょう):水瀉性下痢、急性胃腸炎、暑気あたり、頭痛、むくみ

・柴胡桂枝湯(さいこけいしとう):多くは腹痛を伴う胃腸炎。微熱、さむけ、頭痛、吐き気などのある感冒、かぜの後期の症状

・小建中湯(しょうけんちゅうとう):小児虚弱体質、疲労倦怠、神経質、慢性胃腸炎、小児夜尿症、夜なき

・小青竜湯(しょうせいりゅうとう):気管支炎、気管支喘息、うすい水ようの痰を伴う咳、鼻水

・八味地黄丸料(はちみじおうがんりょう):下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、排尿困難、頻尿、むくみ

・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):立ちくらみ、頭重、胃内停水感などがあるもの、心悸亢進症、めまい、胃下垂、胃アトニー