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薬草のはなし vol.14 桔梗(ききょう)

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 写真は、桔梗の花です。(2020.7.31 東京薬用植物園にて撮影)桔梗の根は漢方薬に配合されており、生薬名は桔梗です。

 桔梗はキキョウ科キキョウ属の多年草です。秋の七草のひとつで、6月~10月にかけて青紫色、または白色の5方向に裂けた鐘形の美しい花を咲かせます。かつては日本各地と朝鮮半島から中国北東部にかけての日当たりの良い野山に自生していましたが、現在は自生している桔梗は非常に少なく、絶滅危惧種に指定されています。

2020.9.10 内藤記念くすり博物館にて撮影


 桔梗は古くからその美しい花が人々に愛されてきた植物です。万葉集(759年)では山上憶良(やまのうえのおくら)が詠んだ秋の七草の歌に(巻八 1538)「萩の花、尾花(すすきの花穂)、葛花(クズの花)、撫子(なでしこ)の花、女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、 朝貌(あさがお)の花」と掲載されています。この「朝貌の花」は桔梗を指しています。
また古今和歌集(905年)や延喜式(927年)、枕草子(996年)、徒然草(1330年)などにも多く登場しており、古くから親しまれてきた植物であることがわかります。

2020.9.11 岐阜博物館にて撮影

同じ場所にて撮影

 写真は、土岐氏(ときし)の流れを汲む、明智光秀(今注目の“麒麟がくる”の主人公)の家紋です。桔梗の木偏を取り去ると、「吉更」となり、「さらに吉」となることから多くの戦国武将に好まれ、明智光秀の他にも、柴田勝家、大田道灌、加藤清正なども家紋として桔梗紋を使用していました。

 桔梗の根には薬用成分であるサポニン(オレアナン型トリテルペンサポニン)が含まれており、咳や痰、のどの痛みを抑える効果があります。サポニンは、桔梗の他にも、大豆や高麗人参、田七人参、アマチャヅルなど、主にマメ科の植物に多く含まれています。サポニンは、シャボン玉のシャボン(sapõ;ラテン語)と語源は同じであり、水と混ぜて振ると泡立つ性質(起泡性)があります。
 桔梗の根にはサポニンの他にも、多糖類の一種で水溶性食物繊維のイヌリンが含まれています。イヌリンには腸内環境を整えたり、糖の吸収を抑えたり、コレステロールを体外に排出させる働きるが認められています。

 日本薬局方にはキキョウ(桔梗根)として掲載されており、鎮咳、去痰、排膿の働きがあります。

桔梗の漢方的な分類

<止咳平喘(咳嗽、喘息を緩解する)>の働きがある。

 ・宣肺去痰 ‥ 風邪、咳、痰が多い ー杏蘇散

 ・排膿   ‥ 化膿        ー排膿湯、排膿散

桔梗が配合されている漢方処方と効能効果

・藿香正気散(かっこうしょうきさん):夏の感冒、暑さによる食欲不振・下痢・全身倦怠

・桔梗湯(ききょうとう):扁桃炎、扁桃周囲炎

・響声破笛丸料(きょうせいはてきがんりょう):しわがれ声、咽喉不快

・杏蘇散(きょうそさん):せき、淡

・駆風解毒湯(くふうげどくとう):扁桃炎、扁桃周囲炎

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび

・荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん):急性化膿性皮膚疾患の初期

・鶏鳴散加茯苓(けいめいさんかぶくりょう):下肢に倦怠感があり、知覚がにぶり、ふくらはぎの緊張を覚え、圧痛があり心悸亢進、下肢浮腫の脚気(かっけ)よう症状を呈するもの

・五積散(ごしゃくさん):胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、冷え症、更年期障害、感冒

・銀翹解毒散(ぎんぎょうげどくさん):かぜによるのどの痛み、せき、口(のど)の渇き、頭痛

・柴胡清肝湯(さいこせいかんとう):神経症、慢性扁桃腺炎、湿疹

・十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう):化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性湿疹、水虫

・小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう):扁桃炎、扁桃周囲炎

・参蘇飲(じんそいん):感冒、せき

・参苓白朮散料(じんれいびゃくじゅつさんりょう):食欲不振、慢性下痢、病後の体力低下、疲労倦怠

・清上防風湯(せいじょうぼうふうとう):にきび

・清肺湯(せいはいとう):痰の多く出る咳

・竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう):インフルエンザ、風邪、肺炎などの回復期に熱が長びいたり、また平熱になっても気分がさっぱりせず、せきや痰が多くて安眠できないもの

・排膿散料(はいのうさんりょう):化膿性皮膚疾患の初期または軽いもの

・排膿湯(はいのうとう):化膿性皮膚疾患の初期又は軽いもの

・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん): 高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘